導入事例

2025.02.07

東栄興業、リスク運転を業界トップクラスに減らして事故損害額も低減 ――『DRIVE CHART』閲覧率アップの仕掛けで指導の納得度を改善

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タクシー事業と物流事業を展開する総合物流カンパニー、東栄興業。このうちタクシー事業(東栄タクシー)では、川崎市をはじめ、横浜市や横須賀市、三浦市といった“京浜交通圏”を中心に営業を行っています。



安全・安心を事業経営の根幹とする同社は、その強化を目的に2019年から『DRIVE CHART』をタクシー全車両に導入。2024年には、既に業界平均で見ても少ない水準だったリスク運転数を対前年比で約50%減らし、事故の損害額も低減させるなど、導入から5年が経過した今も大きな効果をあげています。

どのような運用を行っているのか、代表取締役の真田政幸さんと、タクシー事業部本社営業所 運行管理者の猪狩芳昭さんに聞きました。

会社名 東栄興業株式会社
業種 タクシー事業、物流事業など
保有車両数 60台
導入時期 2019年


導入目的・課題
・デジタルタコグラフを搭載していたが、「急ブレーキ〇回」等アバウトな情報が分かるのみ
・乗務員への指導も具体性が低くなり、乗務員も指導が腑に落ちず悪循環に
・データや根拠にもとづいた質の高い安全指導を行おうと『DRIVE CHART』を導入

導入後の取り組み
・2023年から始めた「閲覧率を上げる施策」により乗務員の運転に大きな変化
・「リスク動画未確認者一覧」や「月間のリスク運転数ランキング」などを見える化
・リスク運転の多い乗務員を個別に声かけ、運転動画を見ながら“諭す”指導に

導入効果
・既に業界平均で見ても少ない水準だったリスク運転数を2024年は昨年比で約50%減
・一時停止の徹底や走行速度の低下により大きな事故が減り、事故の損害額が低減
・「DRIVE CHART Award 2024」でも、タクシー部門でグランプリを受賞

乗務員が腑に落ちない「アバウトな指導」を変えたい


――『DRIVE CHART』導入前は、どのような安全対策をしていたのでしょうか?

真田社長:ドライブレコーダーを活用していましたが、あくまで事故が起こった“後”の検証用に動画を記録しており、未然に防ぐツールという位置付けではありませんでした。では事故防止のために何をしていたかというと、毎日の点呼で乗務員に注意喚起したり、週1回回覧する「安全通信」で“一時停止をきちんと行いましょう”などと気をつけてほしいポイントを記載したり、アナログな指導がメインだったと言えます。

その他には、走行速度や距離といった運行内容を記録するデジタルタコグラフを車両に搭載して、そのデータをもとに、急ブレーキや急発進、速度超過の回数などをチェックしていました。ですがこれらの記録は、急ブレーキなどをしたときの状況や、その原因まで知ることはできません。あくまで1日のうちで「急ブレーキが○回あった」「急発進を頻繁にしていた」というアバウトな情報がわかるのみです。

その結果、乗務員への運転指導も具体性が低くならざるを得ませんでした。急ブレーキが多い原因までたどり着けないので、「減らすように注意してください」としか言えません。あるいは、急ブレーキが多いのは「きっと車間距離を十分にとっていないからだ」という“想像”のもとに乗務員へ指導していましたが、指導された乗務員も腑に落ちないケースが増えていきます。

そもそも本人は急ブレーキをしている意識もないので、何を変えればいいかわからない…ということも多かったでしょう。その姿を見て、指導する側はどうしても感情的になったり、強い口調で言ってしまったりという悪循環になることがありました。


――そのような中で、なぜ『DRIVE CHART』を導入したのですか?

真田社長:一番の狙いは、乗務員の運転を「見える化」したかったからです。『DRIVE CHART』は、一時不停止や脇見といったリスク運転の回数やスコアを定量的に出すほか、実際にリスク運転をしたシーンだけを動画で振り返ることができます。なぜこういう運転になったのか?という原因まで分かるので、それをもとに一歩深い指導ができます。すると乗務員への説得力も変わると考えました。

猪狩様:私は実際に乗務員へ指導する立場ですが、指導が楽に・効率的になるといっても過言ではないと思います。「こういう運転に気をつけてください」というときに、その根拠を『DRIVE CHART』で示せるようになったことが大きいです。

真田社長:安全・安心は、私たちの事業経営における根幹ですし、すべての事故には、一時停止が甘かった、車間距離が短かったなど、引き起こした要因が必ずあります。こうした要因を日頃から潰すことで、事故を限りなくゼロに近づけたいと思いました。

近年は事故を起こした方がSNSで批判されるなど、社会的制裁を受けるケースも増えています。乗務員やその家族を守るためにも安全は重要であり、そのひとつとして『DRIVE CHART』を導入しました。

もともとタクシーアプリ『GO』を導入していたこともあり、『DRIVE CHART』についても開発段階からお話を聞いていました。事故を未然に防ぐツールとして期待していましたし、タクシー事業者目線での意見も出させていただいて。そういった背景もあり、2019年から運用を開始したのです。

2023年からの大改革、行ったのは「閲覧率」を上げる仕掛け


――導入後はどのような運用をしているのですか?

真田社長:当社が保有する全60台のタクシー車両に導入しています。当初から一定の役割は果たしていたのですが、もっと効果を出したいと考えて、2023年に『DRIVE CHART』の運用体制を見直すことに。

具体的に行ったのは、乗務員の『DRIVE CHART』閲覧率を上げることです。『DRIVE CHART』では、各ドライバーの運転スコアやリスク運転のシーンをまとめたレポートを見ることができます。あるとき、乗務員が自分の運転レポートをどのくらい見ているかチェックしたところ、閲覧率が非常に低かったんですね。一部の人しか見ていませんでした。そこで閲覧率を上げようと考え、そのための施策を練り始めました。

猪狩様:まず行ったのは、運転レポートを閲覧していない乗務員の一覧表を事務所の掲示板に毎週公開したことです。「リスク動画未確認者一覧」として、閲覧していない乗務員の氏名と、各人の1週間トータルのリスク運転数やそれを1乗車日あたりの平均に換算した数値、さらにどのようなリスク運転が何回あったか…という内訳などを掲載しました。

これに加えて、月間のリスク運転数が多かった乗務員の一覧表も公開しています。1日平均のリスク運転数で順位をつけ、より注意すべきリスク運転の内訳などと一緒に見える化しています。

個人名を公開するのは慎重にならなければいけないのは分かりつつも、ここまでしないと乗務員の行動は簡単に変わりません。真田に相談したところ、「安全に関わることなら徹底してやるべき」とOKをもらったのを覚えています。

真田社長:乗務員ごとの売り上げやお客さまからのクレームなどに関して個人名を公開するのは控えるべきですが、安全運転は個人の努力次第でできるもの。特に週ごとの未確認者一覧に関しては、あくまで乗務員がレポートを閲覧すれば掲示されることもありません。だからこそ問題ないと判断しました。

様変わりした安全指導、「厳しく伝える」から「諭す」へ


――より改善してほしい乗務員の一覧公開のほかに、何か行っていることはありますか?

猪狩様:リスク運転の多い乗務員への個別声かけを行っています。たとえば「一時不停止」の多い乗務員なら、運転動画を見ながら「減速はしているけど、きちんと止まりきっていないよね」と説明するなど。以前の安全指導とは中身が大きく変わりました。

真田社長:まさに先ほど話したリスク運転の“真の原因”がわかるので、根本からの指導ができるようになりました。一時不停止が多いのはあくまで結果であり、その背景にはスピードの出し過ぎやブレーキのタイミングが遅いといったそれぞれの原因がある。これが動画で明確になる点が大きかったです。

特に一時不停止はタクシー事業者として取り組む必要性が強いと感じていました。国土交通省が公表している「事業用自動車総合安全プラン2025」でも、タクシー事業者に特徴的な事故形態として「出会い頭衝突」をあげています。その原因となる一時不停止は重点削減対象でした。

猪狩様:だからこそ、一時不停止の原因を特定することに時間をかけています。先ほどから話に出ている一時不停止は、当社でもやはり特に多いリスク運転でした。東栄タクシーの運行エリアは、住宅街が中心で、一時停止の場所が頻繁にあります。しかも起伏が激しいポイントも多数あり、停止が甘くなるケースも多い。ただ原因はそれだけではなく、動画を見ていると車両の走行速度にも問題があるとわかりました。

法定速度を守っていたとしても住宅街の一時停止をきちんと止まるためにはもっとスピードを抑える必要があることも動画を見続ける中で改めてわかってきました。そこでスピードを抑えるよう乗務員に粘り強く動画を活用しながら指導したところ、一時不停止が減ってきました。

逆に今は、走行速度が落ちたことで、ドライバーが「脇見」をする回数が増えてきています。ナビを細かく見てしまうことが要因です。そこでナビを見る回数を減らしても問題なく運行できるよう、運転の仕方やその前の準備に関する指導をしています。


――『DRIVE CHART』の結果からリスク運転を把握するだけでなく、その原因と対策を個別指導でフォローアップしているんですね。

真田社長:そうですね。以前なら厳しく感情的に指導してしまったものが、今は根拠がはっきりしているので落ち着いて伝えられます。“諭す”コミュニケーションになりました。加えて、以前は全員一律で指導するしかなかったのが、今は優先的に対応した方がよい乗務員が明確になりました。順序よく効果的に対策できるようになりました。

猪狩様:「一時停止をしっかりしましょう」と呼びかけるにしても、以前はみんなが「自分はきちんと止まれている」と思っていたわけです。今は止まれていない人とその理由が明確にわかるので、その人に呼びかけたときの受け止め方、納得感も違いますね。

――キャリアが長くご自身の運転に自負を持っている乗務員もいらっしゃると思いますが、そういった方からの抵抗などはありませんでしたか?

猪狩様:逆に、むしろベテランの乗務員ほど、リスク運転を減らそうと努力してくれていますね。キャリアが長くて立場も上なのに、『DRIVE CHART』の結果を見たら若い人にがっかりされる……という状況は、本人が一番避けたいですから。乗務員同士でも「今週のスコアはよかった」などの会話が出てきて、みんなで改善していく雰囲気が生まれています。

2024年には元より少ないリスク運転数が前年からほぼ半減。事故損害額も低減


――これらの取り組みで、どのような効果が生まれましたか?効果的な事故削減に取り組む企業を表彰する「DRIVE CHART Award 2024」でも、タクシー部門でグランプリを受賞されていました。

猪狩様:これまでリスク運転を減らし続けてきましたが2024年は昨年比で約50%減となりました。導入企業における「タクシー」カテゴリの平均回数と比較してもかなり下回っているとカスタマーサクセス担当の方からも伺っています。

先ほど話したように、リスク運転未確認者の一覧公開などは閲覧率を上げるために始めた取り組みでしたが、いざ実行すると、リスク運転数も大きく下がっていきました。みんなが数値を気にするようになったからでしょう。今回のアワードについても、グランプリと聞いてびっくりしました。カスタマーサクセス担当の方からも授賞式イベントにてぜひ取り組みを発表してほしいと言っていただき、やってきたことが間違いではないとわかり嬉しかったです。

――そのほかに出ている効果はありますか?

猪狩様:事故の損害額が下がってきました。一時停止の徹底や走行速度の低下により、大きな事故が減り、車の損害が小さくなったためです。

真田社長:2024年には、神奈川県のタクシー協会・バス協会・トラック協会が主催する事業用自動車事故防止コンクールでも「県警察本部長、運輸支局長表彰」をいただくことができました。乗務員の安全意識の高まりが生んだ成果だと捉えています。


――最後に、今後の目標をお願いします。

猪狩様:一度の乗務あたりのリスク運転数について、全乗務員が目標とする水準を下回ることが次のステップです。既に全社平均では目標を下回っていますが、一部の乗務員が超えているため全乗務員が達成することを目指します。

同じ指導だけでは飽きられてしまうので、たとえばリスク運転未確認者一覧表のデザインを改良したり、時には私からの厳しいコメントを添えたり、細かな変化をつけていきたいと思います。これまでも、乗務員が注目するように一覧表のリスク運転が多い項目に色をつけたり太字にしたり、いろんな改善を重ねてきました。これからも続けていきます。

真田社長:タクシー業界は大きな変化が起きていますが、その中でも絶対に変えてはならないのが「安全の追求」です。繰り返しになりますが、安全は事業経営の根幹ですし、公共交通機関としてお客様に信頼され選ばれるためには「安心して利用できる」ことが何より重要です。限りなく事故をゼロに近づけていきたいですね。

『DRIVE CHART』はそのための大きな武器であり、事故防止に欠かせないパーツ。これからもうまく活用しながら、時にアレンジしながら、安全を突き詰めていきたいと思います。

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