導入事例
2025.02.07
大西運輸、リスク運転削減で「重大事故ゼロ」継続 ーー思いやり運転の拡大で「安全の輪」広げたい

総合物流業者である安田倉庫のグループ会社で、石川県金沢市を本社に運送事業を展開する大西運輸。業界で先駆けて、複数メーカーの照明電材や住宅建材、事務機器などを配送先ごとに一括で「共同配送」するシステムを2000年に開始し、実績を積み重ねています。
さらに運搬するだけでなく、メーカーから保管した商品の加工から納入、配送後の設置まで、一気通貫でサービスを提供。物流会社、物流業界、物流の未来をより良い方向へ変えていくため、チャレンジング&トランスフォーメーション=CXによる変革にも挑戦しています。
『DRIVE CHART』の導入も、CXの一環。各メーカーからお預かりした大切な製品を運び、納入するにあたって、より低リスクで安全を担保する取り組みを行うことも運送会社に求められる重要な品質です。「重大事故ゼロ」を継続できており、「安全はすべてに優先する」という方針のもと、件数は同社ホームページでも公開されています。
『DRIVE CHART』導入から成果が出るまでの過程で、どのように運用していったのでしょうか。代表取締役社長 丹羽 雅治さん、常務取締役 清水 達也さん、品質管理課から坂田 誠さん、加藤 久佳さん、小竹 英治さんに伺いました。
会社名 大西運輸株式会社
業種 一般貨物自動車運送事業、自動車運送取扱事業、共同配送事業など
保有車両数 289台
導入時期 2023年4月本格運用開始
丹羽 雅治社長
導入目的・課題
・事故やクレームがあった際に、ドライブレコーダーの映像をすぐに確認したい
・帰庫のタイミングもまちまちで、SDカードを抜いて映像を確認しづらかった
・「安全はすべてに優先する」の方針のもと、重大事故ゼロで配送品質を担保するため
導入後の取り組み
・リスク運転動画は部署長と品質管理課で確認し、危険性を伝えるコメント付きで共有
・特にリスクの高いものから指導し、改善が見られない場合は添乗指導も行う
・リスク運転ゼロのドライバーに報奨金が出るコンテスト、優良ドライバーの取り組み共有も実施
導入効果
・1,000kmあたりリスク運転は導入当初比で「脇見」99.9%減、「一時不停止」100%減
・2023年度、2024年度と「重大事故ゼロ」を継続
・重要目標としていた「追突事故」「出会い頭事故」も2024年は発生無し
5社のドラレコを詳細比較し、3社をテスト導入…決め手は?
ーー2024年問題など、物流業界が揺れ動く中で様々なチャレンジを続けられていますね。
清水常務:もともと運送業界というのは、ひとつの現場に行くにしても地図を見て、指示書を見て…という完全アナログな仕事でした。たとえばメーカー様から商品が弊社の倉庫に入ってきた際も、出荷伝票と商品をキャリア30年以上のベテランドライバーが、目視で職人技のように照合しています。
現在は従業員全員にスマートフォンを持たせて、指示書も地図もデジタルに。紙の多い業界なので、それをいかに削減できるかというのを取り組んでいる最中です。ホームページでも「CX Times」ということで我々の「挑戦」を伝えていますが、令和6年度(2024年度)のスローガンはまさに「挑戦!改革!」。今まで出来ていなかったことを積極的に取り組んでいます。
ーーホームページでは「安全マネジメント」の中で「AIドライブレコーダーの活用」についても伝えていただいています。改めて、どのような経緯で『DRIVE CHART』を検討いただいたのでしょうか。
清水常務:我々、品質管理課ができたのが約3年前ですが、当時は「2024年問題」以前ですから長距離ドライバーは出たら数日経たないと帰ってこないというのが常識でした。車両には簡単なSDカード式のドライブレコーダーが付いていたのですが、例えばクレームがあり映像を確認しようとしても、車両が遠方にいたり、映像が記録されていなかったりと、思うように確認できないこともありました。
仮に事故があってドライバーが報告書を提出しても、具体的にどう改善したら良いか…など、明確なルールは定められていませんでした。そんな中で同じグループ会社が『DRIVE CHART』というAIドライブレコーダーで安全管理をしていると聞き、検討し始めたという感じです。
5社のドライブレコーダーを詳細に比較して、そのうち3社の製品をテスト導入して試してみました。最終的に『DRIVE CHART』を選んだ決め手は「使いやすさ」です。もともと我々もドライバー職ですのでITツールを使いこなすことが得意なわけではありません。パッと見て分かりやすく、管理しやすく、使いやすいものを…というのがまずは前提でした。
坂田様:また、室内カメラが撮影するということで「プライバシーモード」があることも導入のポイントになっています。監視されるんじゃないか…というイメージがドライバーにあったものですから、まずはそれを払拭しようということで「安全を守るために付けたものであって、ずっと運転を撮っているわけではないよ」と丁寧に説明していきました。
そういった説明をできるようにするためにも、まずは管理職が使ってみて理解したうえで、段階的にドライバーの車両へ導入したという流れです。現在は採用面接のときに必ず「大西運輸の車には室内カメラのあるドライブレコーダーが付いているけれども、リスク運転を検出した際など特定のシーンだけWeb上で確認する用途である」と、きちんとドライバーの安全を守るためだと説明して納得してもらっています。
プライバシーの観点では、権限の切り分けができるのも導入にあたってのポイントでした。基本的に他のドライバーの映像を見られるのは管理職だけとしています。管理職も、他部署のドライバーの映像を見る際は、安全管理以外のことには使いませんという誓約書を書いてもらっています。
注力するリスク運転項目の設定、ドライバー特性や危険度別など指導運用も設計
ーー『DRIVE CHART』を導入してみて、当初はいかがでしたか?また、数値を見てどのように指導を行っているのでしょうか。
清水常務:一番多かったのは「脇見」で、その次が「一時不停止」。検知された「脇見」の映像を見て、地図や伝票を見ながら運転する、指示書をスマートフォンで確認する…など、業務として行ってしまう行動もリスク運転になると認識しなおしました。「一時不停止」も、ここで歩行者や自転車が飛び出して来たらどうなっていたか…という映像もあり、そのような万が一の事故を防ぐためにも、これは改善しないといけないな、と。
坂田様:基本、各部署長にはドライバーのリスク運転があると通知が行くようにしています。品質管理課も映像を確認して、危険度が高いときはすぐにドライバーへ連絡。そうでないときも検出されたリスク運転映像に品質管理課のコメントを入れて各課に戻し、指導をしてもらうという形です。それでも改善されない場合は、品質管理課から直接指導、注意を入れます。
清水常務:このリスク運転は絶対に指導してね、ということをまず部署長に分かってもらい、ドライバー自身どんな運転をしているのかを自分で見てもらうことを習慣にしてもらっています、そのために品質管理課はリスク運転映像に何が危険なのかをコメントします。また、今期からは警察OBの小竹にも入ってもらって、より一層適格なコメントや指導を返せるようにしています。
小竹様:リスク運転を事故に遭ってしまう危険性で大・中・小と分類しています。基本的にあがってきた映像をすべて確認し、強弱をつけて注意します。また、例えば見通しの悪い住宅街のT字路でも、一時停止なり徐行をしなければなりません。そういった所も意外と知られてないと分かったので、リスク運転としてあがってこないところも注意したりしています。
加藤様:リスク運転映像へのコメントや部署長からの指導でも改善されない場合は、品質管理課のメンバーが添乗指導を行っています。実際、脇見がすごい量だったあるドライバーは、添乗指導によってその後の脇見を大きく減らすことができました。添乗指導をすべきドライバーを絞り込めることも工数の観点でも大きな効果がありました。
ーードライバーの特性に合わせた個別指導のほかに、効果のあった取り組みはありますか?
清水常務:会社として共通の課題設定ができるようになったことも効果的でした。『DRIVE CHART』のカスタマーサクセス担当の方からも、まずは何か一つのリスク運転項目でクイックヒット(小さくても短期間で成果をあげること)を出して、皆が効果に納得できるようになることが重要と伺っていました。そこで最初はドライバーにとって一番わかりやすい「一時不停止」を重点対象としました。リスク運転の映像を見ると、止まって安全確認をしているつもりでも3km/hと速度が出ていることがあります。なので、これを減らすべく重点的に取り組もうと決めました。そうした目標の設定や進捗状況についても月に一度実施する管理職会議にて、部署ごとに『DRIVE CHART』の月次レポートを報告することで話し合っています。
加藤様:研修は年に2回、安全運転講習会ということで50名程度ずつ大きな会場を借りて行っています。また、3か月に1回は『DRIVE CHART』のスコアなども活用して、事故惹起者を集めたカウンセリング講習会も実施。ただ、最近では安全運転を続けている人にも焦点を当てて、優秀な人はどういった運転をしているのかをヒアリングし、アンケートをまとめて部署長に報告したりもしています。
坂田様:安全運転のモチベーションを上げるために、『DRIVE CHART』のコンテストも開催。一定期間リスク運転ゼロだった社員に、報奨金を支給するようにしています。現在約300名の社員がいますが、6月は約130名がリスク運転ゼロでした。対象の期間だけを頑張るということがないように、集計対象となる月はシークレットにしています。
脇見・一時不停止をほぼゼロにすることで、「追突事故」「出会い頭事故」も2024年は0件
ーーそういったお取組みの成果については、いかがでしょうか?また、成果を受けてさらに行っている施策はありますか?
清水常務:ホームページにも記載していますが、まずは「重大事故ゼロ」を2023年度、2024年度と継続できていること。さらにリスク運転も「脇見」が導入当初と比較して1,000kmあたりの換算で99.9%削減、「一時不停止」も同100%削減と大きく減らすことができました。その結果として事故の質も変わりました。具体的には重大事故に繋がりかねない「追突事故」や「出会い頭事故」も2024年は発生していません。2024年からリスク運転ゼロを目標に掲げ、各種対策を強化・推進してきた成果が今、実を結び始めていると考えています。
現在の課題としては、一般道や高速道路ではない敷地内で静止物に軽く当たってしまう事故が起きている点。道路で集中している分、敷地内で油断してしまうのか、緊張が解けてしまうのか…。『DRIVE CHART』で交通ルールは守れているのですが、その先の部分の課題です。1,000kmあたりのリスク運転数も少ない状況が続いているので、更に良くするためにどうしたら良いだろうと。
敷地内では、アナログですが停止位置を決めたり、接車の場所を決めたりと改めて構内でのルール決めを行っています。バックをするときにはハザードを出して、一呼吸置いて安全確認してからというルールも設けました。『DRIVE CHART』交通安全運動2024の期間中には「急後退」を重点項目に据えるなど、改めて意識の面から変えていきたいと思っています。
さらに、思いやり運転をドライバーにはぜひ報告してください、と呼び掛けて取り組み中です。思いやり運転については2024年になって導入した施策で、例えば横断歩道で待っている人を見かけたらきちんと停車するなど、歩行者や他の車両が安心して行動に移せるような良い運転をできたらぜひ報告してくださいというものです。現状『DRIVE CHART』ではリスク運転しか上がってこないので、思いやり運転の好事例を集めドライバーに広めたいと思っています。先ほどの優秀ドライバーへのヒアリングも、その一環ですね。
燃費確認や労務管理、リスク運転データのハザードマップ化などの活用も
ーーその他、車両管理面で特にお使いの機能はございますか?
加藤様:メンテナンスが必要な車両などを品質管理課で実際に車両を確認しに行きますが、『DRIVE CHART』で駐車位置がわかるのはありがたいです。あと燃費についてもドライバーが月報でメーターの実数を記録していますが、『DRIVE CHART』でも走行距離が取れるので二重に我々でも確認を行っています。
また日報機能も、帰庫の時間などドライバーの流れを確認するために使用しています。特に若いドライバーは効率良く早く行こうと、休まずに仕事をしてしまいがち。「無理するなよ」「少し休憩を」と声かけしてあげないと、食べるのも抜いてガムシャラに働いてしまう面もあるので、無理していないかなとチェックするのにも使っています。
清水常務:遠隔動画取得は、ヒヤリハットや思いやり運転のほかにも、万が一の事故やクレームが入った場合の確認に使います。仮にクレームの場合、導入以前のSDカードではすぐにどちらに非があるのか分かりませんでしたが、『DRIVE CHART』ではすぐに映像を確認できるので、今後こうしたら良いという材料が取れるようになっていますね。
導入から2年弱が経ち、ドライバーの運転データも集まってきて、リスク運転が起きやすい場所が見えてきています。そういった場所にハザードマップのように印をつけて、音声が出るように設定中です。女性の優しい声で言ってもらったほうが効果があるかな…とか、今後も活用方法は無限にあると思いますね。
ーーありがとうございます。今後のお話も少ししていただきましたが、改めて『DRIVE CHART』活用について、展望をお聞かせいただけたらと思います。
清水常務:リスク運転は減りました。そこからさらに進むには、好事例が増えるように『DRIVE CHART』を活用していくことかなと考えています。そこで、思いやり運転の輪を広げようと今期取り組んでいるところです。
ドライバーの思いやり運転を増やし、好事例が集まり、広く伝われば、社会全体を巻き込んで思いやり運転の輪が広がっていくかもしれません。そのように大西運輸から「安全の輪」が広がっていくよう、これからも取り組みを続けていければと思っています。