導入事例
2024.06.28
ヨシケイ東埼玉、導入後に事故は3分の1、保険割引率は大幅アップ――活用の秘訣は「運転成績と評価制度のリンク」
食材の宅配サービスを全国展開する「ヨシケイ」のフランチャイズであり、東埼玉エリアと兵庫県南西部・播州エリアの配達を担うヨシケイ東埼玉。約70の配達コースがあり、車両を運転して食材を届ける営業員は80名ほど。そのほとんどが女性です。毎朝明るい雰囲気の中で各コースに出発し、夕方に戻ってくるという一日を送っています。
そんなヨシケイ東埼玉では、4年ほど前から全車両(約70台)に『DRIVE CHART』を導入しています。これにより、事故は3分の1に削減、保険割引率も大幅に向上するなどの効果を生みました。
とはいえ、導入直後はなかなか『DRIVE CHART』を確認する営業員が増えなかったとのこと。どのような運用で成果をもたらしたのか、同社代表の前川将樹さんに聞きました。
会社名 株式会社ヨシケイ東埼玉
業種 夕食材料宅配など
保有車両数 70台
導入時期 2021年8月
導入理由 事故を起こした営業員が辞めてしまうケースが多く、安全運転を強化するために『DRIVE CHART』を導入。人事評価にも運転成績を組み入れるなど、改革を行った。
長く働き続けてもらうためにも「事故」をなくしたかった
――『DRIVE CHART』導入前は、営業員の方の運転についてどのような課題を感じていましたか。
大きな悩みだったのは、事故を起こした後に辞めてしまう人が多いことでした。実際に、とある期間に事故を起こしてしまった4名のうち3名が退職したこともあったんです。
事故を起こすのは、入社1年以内のケースがほとんどでした。うちのトラックは箱型の保冷庫を積んでいるため、後方が見えにくくなります。こういう車両の運転に慣れている方は少なく、しかも入社直後はコースや配達先の住所など、覚えなければならないこともたくさんあります。どうしても入社から日の浅いうちに運転ミスをするケースが多かった。
人を確保するのが大変な時代になる中、せっかく仕事に慣れて数字を出し始めた人が事故をきっかけに辞めてしまうのはつらいものです。それを避けたいという思いは強くなっていました。
事故を完全に無くすのは難しいとしても、人に絡む大きな事故を減らせれば、退職せず仕事を続けられる人が増えるかも。事故が起きれば相手の方にも迷惑がかかりますし、後処理もつらい作業です。こうしたことは少ないに越したことはありません。
加えて、私たちの車両は会社名が入った「看板車」ですから、事故を起こせばヨシケイのイメージにも大きく影響します。事故だけではありません。危ない運転をしていれば、地域の方の印象も悪くしますし、直接会社にご連絡が来ることもあります。
――当時はどのような安全対策をしていたのですか?
ごく一般的なこと以外の、有効な方法をなかなか見出しにくかったです。実際に行っていたのは、保険会社の安全運転チェックシートを活用したり、朝礼で気をつけるように伝えたり。大きな事故が連続するような事態は経験していなかったので、それで満足してしまっていた部分もあったかもしれません。
当初は数台の導入に留めるつもりも、レポートを見て全車両の導入に変更
――そんな中、どういうきっかけで『DRIVE CHART』を導入したのですか?
ある展示会に行ったとき、ドライブレコーダーを使って安全運転を強化するサービスがあると知りました。仲間内の会社でも使っていると聞いて、調べてみたんです。それまでもドライブレコーダーを設置した車両はありましたが、あくまで事故が起きたときの事後処理に活用するため。事故の予防や安全運転が目的ではありませんでした。そうして調べるうちに、AIを使ったドライブレコーダーに興味を持ち、『DRIVE CHART』に行きついたんです。すぐにメールで問い合わせました。
最初はどこまで効果があるか分からないので、とりあえず数台だけ導入して、新人や事故を起こしたばかりの人の再教育用に使おうと思っていました。それで、まずは試しに数名の営業員に運転してもらったのですが、リスク運転の検知数が想像をはるかに超えていてびっくりしたんです。1台につき、1日40、50件の検知は当たり前で、なかでも「一時不停止」と「脇見」が多かったですね。
特に脇見については、当時ちょうど配達に使う配達表を紙からスマホに切り替えたタイミングで、明らかに運転中にスマホを見てしまっていることが分かりました。そこで、『DRIVE CHART』で該当シーンのカメラ動画を確認したら明らかでした。
たまたま事故になっていないだけで、実はリスク運転をたくさんしていると痛感したんです。そもそも、一時不停止や運転中のスマホ操作は法令違反。これはまずいと思い、予定を変更して全車両への導入を決断しました。
――営業員の方はすんなり受け入れてくださいましたか?
もちろん抵抗はありましたよ。「監視されるようで嫌だ」という人もいたり、「運転中はリラックスしたい」という声もあったり。でも実際にこれだけ検知されているのですから、そのままにはできません。リスク運転の検知動画もあります。それは説得力になりました。思いつきで導入するのではなく、事実に基づいていますから。
私からは、『DRIVE CHART』は監視するものではなく、みんなのために設置するものだと伝えましたね。繰り返しますが、事故は誰も幸せにしません。金額面でも、車の修理代や保険の割引率の低下など、少なくとも数十万円の影響が出ます。であれば、安全運転を心がけて、そのお金を奨励金などに回すほうがずっといいよねと。
こうして全車両に導入しましたが、最初からうまく運用できたわけではありません。しばらくは、運転レポートやリスク運転の振り返りが営業員の間で習慣化しなかったんです。『DRIVE CHART』のカスタマーサクセスの方にいろいろ相談しながら、運用方法を考えていました。
徐々に進んだ活用、大きかった「評価項目」への組み入れ
――そこからどうやって浸透させていったんですか?
いろいろやりました。一つは、毎週月曜にリスク運転の多い営業員の「ワースト5」を社内に貼り出すようにしました。連続でランクインした人は蛍光ペンで名前を塗るなどもしましたね。
実は全車に導入したところ、一番悪い結果になったのは営業所の管理職だったんです。本来、安全運転を呼びかける上席の人間がこれでは説得力が出ません。そこである社員から、管理職も含めて「全員の運転成績をみんなが確認できる方がいい」と提案があり、この取り組みにつながったんです。効果は抜群でしたし、立場に関わらず名前が載ることで、みんなが公平に扱われていると感じることにもつながりました。
その他、社員がLINEから『DRIVE CHART』の情報を見られる仕組みを作ってくれたり、運転レポートをもとに朝礼で注意点を話したりするようにしましたね。さらに、当社の車両運行規定に『DRIVE CHART』に関する記述も追加しました。
そして一番効果があったのは、営業員の評価項目に『DRIVE CHART』の成績を組み込んだことです。
――どのように組み込んだのでしょうか?
うちの営業員の評価項目は全部で4項目あるのですが、その一つを「リスク運転の検知数」に関するものにしたんです。具体的には、週1,000kmあたりのリスク運転数を基準とし、それをどれだけ減らすか、営業員ごとに目標を設定します。そうして、実際に減らせた数に応じて1~6点で評価していきます。
『DRIVE CHART』が検知するリスク運転は8項目ありますが、最初から全項目で行うと負荷がかかるので、まずは「一時不停止」と「脇見」で実施しました。慣れてきたのを見て、現在は8項目全てで評価しています。安全運転で結果を出せば、営業成績を5%伸ばすのと同じくらいの人事評価につながります。
この取り組みを始めると、「評価にかかわるなら運転に気をつけよう」と真剣に取り組んでくれる人が増えました。安全運転をしてくれるなら、どんな動機でもいいんです。それは全てにプラスですから。この制度を入れたことは正しかったと思っています。
安全運転のために、物理的な対策も行いました。脇見の検知が多い人については、スマホのホルダーを車両後部に設置し、運転中は見られないようにしたんです。これにより、脇見の検知が週20件から週1件に減った人もいました。
事故件数削減に保険割引率アップ、さらに燃費の向上も
――これらの取り組みで、どのような効果が生まれましたか?
事故の件数は大幅に減りましたね。保険対象の事故は導入前の3分の1になりました。なかでも東埼玉エリアは、2023年度の保険事故がゼロに。これは初めてのことでした。保険の割引率も、事故件数が減ったことで一時は22%から54%になりました。
先日は、私が管轄しているもう一つの営業所である播州の営業所で初めて1週間の脇見検知ゼロを達成することもできたんです。播州は導入当初から脇見が非常に多く、それがゼロになったのは大きな成果だと思います。
思わぬ副次的効果もありました。営業員が安全運転を意識した結果、急加速や急ブレーキが減って燃費が良くなりました。播州の営業所ではリッターあたり0.7kmほど上がっています。最近は、警察の方からも「ヨシケイの車は、一時停止できちんと止まるようになったね」と言っていただいて。最近は運転が良くなったと。もしかすると、一般の方も同じように感じているかもしれません。それは会社のイメージにもプラスですよね。
運転成績の悪かった管理職も努力して、家族から「運転が上手になった」と言われたみたいです。喜んでいましたよ(笑)。私も、『DRIVE CHART』が付いていない自分の車に乗るときも安全運転を心がけるようになりました。
――今後は『DRIVE CHART』を活用して、どのようなことをしていきたいですか。
究極の目標は、全ての事故を無くすことです。それが難しくても、人の絡む事故はゼロにしたいです。そして法令遵守を徹底して、違反がないようにしていきたいですね。
そのためにも、今後は動画などで安全運転を学ぶ機会を設けるのも良いかもしれません。『DRIVE CHART』でもe-ラーニングの教材があるということで、どのように活用するか検討したいと思います。安全運転の啓蒙動画というと、警察で見るような、事故の恐怖感を煽る内容が多いものです。それではうちの営業員は萎縮して、かえって運転が怖くなります。
そうではなく、運転のコツや気をつけることなど、役立つ情報を教えてもらえる動画が理想ですね。『DRIVE CHART』のe-ラーニングはその方向に近いと感じたので、有効かもしれません。一つでも事故を無くし、たくさんの人が働き続けられる会社を目指したい。その実績を積み重ねていけば、業務への安心感も生まれ、ここで働きたい人を増やすことにもつながるでしょう。これからも安全運転に力を入れていきます。