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2024.05.27

「時間外労働の上限規制」に物流業界は“ポジティブ”? その理由は…「2024年問題についてのアンケート」調査結果を公開

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2024年4月1日から、運送業、建設業、医師らにも「時間外労働の上限規制」が適用され、時間外労働は原則として月45時間、年360時間(限度時間)以内となります。運送業の場合、三六協定の特別条項を適用する場合でも、年960時間の上限規制が課されます。


これがいわゆる「2024年問題」ですが、特に運送業は①規制により、1日に運べる荷物の量が減る、②過当競争の中、運賃の値上げがしづらい、③走行距離に応じた運行手当が減るため、ドライバーの収入が減少するなどの理由から、影響が大きいとされています。

実際に、現場の実態はどのようなものなのでしょうか。『DRIVE CHART』を導入している「運送業」の安全運転管理者・車両管理者50名に、2024年問題について調査してみました。

上限規制は「ポジティブ」or「ネガティブ」…その理由は?

まずはざっくりと、時間外労働の上限規制について「どのように捉えていますか?」と問うと、「とてもポジティブ」「ポジティブ」合わせて42.0%と、「ネガティブ」「とてもネガティブ」(20.0%)を上回り、世間のイメージとは違った結果に。

そこで「とてもポジティブ」「ポジティブ」と回答した42%の方に、その理由を聞いてみました。すると、圧倒的に多かった回答が「労働環境・条件を改善することができる」(81.0%)、「ドライバーの負担を解消できる」(71.4%)の2点。今回の上限規制を、生産性改善のチャンスに変えようとしている企業も多いようです。

反面、「ネガティブ」「とてもネガティブ」と回答した20%の方にその理由を聞くと、一番多く回答が集まったのは「車両調達や車両維持などのコスト削減が難しくなる」(70.0%)でした。その他回答が分かれましたが、「労働環境・条件が厳しくなる」「勤怠管理が厳しくなる」「リードタイムの調整が難しくなる」(ともに60%)と、実務への影響を挙げる方もいました。


こうした中で、企業はどのような対策を実行しているのでしょうか。2024年問題の大きな影響として人材の確保が挙げられていますが、「労働環境・条件を改善する」(72.0%)ことで、従業員満足度を維持向上していこうという姿勢が窺えます。反面「勤怠管理を強化する」(60.0%)ことで、上限規制については周知徹底していく企業が多いようです。

この2点は、法改正により「より意識が高まった項目」としても「労働環境・条件を改善する」(68.0%)、「勤怠管理を強化する」(44.0%)として挙げられており、上限規制が適用される直近の対策としては人材確保と勤怠管理に集中している企業が多いのかもしれません。

安全意識は「向上」、さらに「荷主側」「消費者側」に要望したいこととは

「2024年問題」として影響ばかりが取り沙汰されますが、上限規制による長時間労働の是正は、心身の疲労による交通事故などの労働災害からドライバー(労働者)を守るためのものでもあります。

「法改正によって、危険運転や交通事故に対する安全意識は変わりましたか?」と質問すると、「向上」「やや向上」を合わせて44.0%と改善が見られます。「変わらない」も40.0%となっていますが、「やや低下」「低下」は4.0%に留まりました。

具体的に、どのような点で安心・安全の意識が高まったのかを問うと、「法令遵守の徹底」が一番多い66.0%。以下「運転中のドライバーの安心・安全の確保」(60.0%)、「客観的な勤怠による労働管理」(32.0%)、「運転技術、およびマネジメントの指導」(32.0%)と続きました。

さらに、「荷主」、つまり発注側との関係も重要な観点となります。

こうした状況下で「荷主に選ばれるためにどのような対応をする、もしくはする予定がありますか?」と聞いたところ、一番多かったのは「配送品質の維持・向上」(82.0%)。続くのは「安全管理対策の強化」(68.0%)「法令遵守の徹底」(66.0%)で、運送業者にとって負担となる「配送量の維持・向上」(28.0%)、「運賃・荷役料の維持・値下げ」(6.0%)と回答した企業は少ない傾向にありました。

最後に、運送業者として「荷主側」「消費者側」にしてほしい対応はありますか?と自由回答で聞いてみました。

まずは「荷主側」への要望ですが、一番多かったのは「運賃の値上げ」「適正な運賃設定への理解」といった、値上げに対する理解です。さらに労働時間の上限が厳しくなると、時間の使い方も重要に。荷積み・荷下しのための「待機時間」は大きな問題となっており、「時間厳守の維持・徹底」「待たせない、手間をかけさせないでほしい」といった声も多く挙がっています。

さらに「消費者側」への要望についても、「再配達の減少」「配達指定時間の不在はやめていただきたい」など、運送業者の現状を理解してほしいとの声が目立ちます。「物流にスピードを求めない」「宅配業者への寛容な気持ち」「物が届かなくなるかもとの意識を持ってほしい」といった回答もあり、指定した時間には必ず受け取る、置き配の活用、余裕をもった時間指定など、消費者側も協力して2024年問題の解決に当たっていく必要がありそうです。


「2024年問題」を乗り越え、選ばれる運送企業になるためには?


今後は「安全管理」を基点とした「輸送の高品質化」が重要です。安全運転による走行習慣を基点に「好循環」を生み出すことが、競争優位性の確保につながっています。輸送の高品質化に向けた「安全運転走行習慣の確立」にご興味がありましたら、お気軽に下記フォームよりお問合せください。詳しい資料をお送りいたします。

※本記事のアンケート調査方法は以下のとおりです。
調査対象:DRIVE CHARTサービス契約者のうち、トラック・バン(運送業)の安全運転管理者・車両管理者50名(スクリーニング調査にて抽出)
調査期間:2024年3月21日~2024年3月28日